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自治体の文化施設に、指定管理者制度の運用見直しの動き広まる
2008年07月25日 10:44 更新

■公立の美術館や博物館が指定管理者制度を導入して3~4年になる。文化施設にはイベント関連企業の指定管理者も少なくない。昨年の文化庁の調べによると、公立の美術館・博物館550(回答に応じた施設)のうち指定管理者制度を導入しているのは93館で、全体の17%にあたる。導入の内訳は市区立が64館で、都道府県立が25館、町村立が4館である。

■日経新聞(7月19日本紙)が、全国の自治体の文化施設で指定管理者の運用で見直しの動きがひろまっているとしていくつかのケースを紹介している。文化施設の最適な運営方法が改めて問われているということだ。要点だけを紹介しておこう。

■そもそも指定管理者制度は、公共施設の運営者を民間からつのり、サービスの向上と効率的な運営を目的としたものだが、見直しの動きはほぼ次の3パターンに分類される。
①制度を廃止して直営とする
②制度は維持するが、独自の運営スタイルを採りいれる
③直営でも制度でもない第3の選択肢による運営を検討する

■①の「制度を廃止して直営とする」は、同じ直営でも自治体の施設によって考え方が異なる。たとえば北海道の伊達市にある市立宮尾登美子文学記念館。観光客を期待したものの年間入館者数が目標の十分の一以下の3700人とふるわず、館の設置を観光客誘致から市民の文化施設へと転換をはかることにし、指定管理者だっただて観光協会の運営から直営に変わる。管轄も観光担当の市の経済環境部から教育委員会に移管する。

■同じ廃止・直営でも栃木県足利市の市立美術館のケースはまた異なる。運営の主体を数年ごとに選び直す仕組みが、長期的な研究や企画、人材育成を必要とする美術館にはそぐわないとして直営に戻すというのだ。作品の寄贈や寄託なども考えると、市民の信頼を得るためには継続して運営できる保証がなければならない、ということだ。

■制度は維持するものの②の独自の半官半民スタイルで成果をあげているのが島根県の県立美術館だ。長期的な視野が必要な学芸部門は直営のまま残し、管理や運営の部門だけを制度の対象にする独自の形態による運営である。

■この島根県立美術館で指定管理者として管理部門を運営しているのがサントリーの子会社の(株)SPSしまねである。親会社も含めてこの企業は、サントリーホールなどの運営やサントリー自体のイベントなどで培った能力や経験を如何なく発揮している。親会社は全国の文化施設の運営にかかわり、大きな成果をあげている。

■島根県立美術館は平成11年3月のオープンで、まもなく300万人の入館者を達成する。その達成月をクイズにして応募させるなど民間ゆえのマーケティングやイベント戦略を駆使して成果をだしている。伊達市の場合は振るわなかった観光だが、島根県立美術館は地元の観光拠点としての成功例である。年間観覧券を5000円から3000円に値下げしたり、コンシェルジュサービスを導入したりするなど、次々とアイデアを駆使して多様なサービスを実現させ入館者を集めている。

■直営でも指定管理者制度でもない③の第3の選択肢を検討しているのが大阪市だ。市内の7つの美術館・博物館を一括して地方独立行政法人として運営できるよう国に構造改革特区の適用を申請中である。独立行政法人なら一つの運営主体として継続して事業を担え、一括運営のメリットもあるからだ。06年につづく2度目の申請で国の判断を待つ身だが、この申請が降りるとなると、大阪市にならい、独立行政法人として独自の運営スタイルに名を挙げる自治体が出てくることになるかもしれない。

■指定管理者制度の文化施設への導入で明らかになったのは、制度の導入と個々の文化施設との関係は本来ケース・バイ・ケースであり、(導入は)各自治体が地域や施設の特性、規模などに応じて考えなければならないということだ。そして重要なのは優秀な人材を確保できる形態を選んでいるかだ。

■制度を廃止して直営とする動きへの見なおしに至っているのは、これまで自治体がそうした施設の特性や人材の確保を無視し、コストの削減を狙って指定管理者制度にとびついた面が大きい。制度の導入を経たことで、それぞれの美術館・博物館に見合う運営方式を選ぶ必要性を理解し、運営方式の見直しの機運がうまれてきたといえる。


※参考 文化庁HP/社団法人全国公立文化施設協会HP/サントリーパブリシティサービス株式会社HP/島根県立美術館HP


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