イベントに関わる人を支援する総合サイト
イベントコンサルティングなどのイベントビジネスTEL 03-5820-7161WEBからお問い合わせ

HOME > NEWS&TOPICS [バックナンバー一覧] > 「目黒のさんま祭り」は、〝地ブランドの代理戦争〟イベントだ!

NEWS&TOPICS
「目黒のさんま祭り」は、〝地ブランドの代理戦争〟イベントだ!
2007年09月19日 09:42 更新

毎年9月、東京のJR目黒駅をはさんで二つの「目黒のさんま祭り」イベントが開かれる。双方のイベントが本家を主張して一歩も譲らずに張り合い、それがまたマスコミに格好の話題を提供する。巧みな地域のPR戦術といえるが、この二つのイベントは一方ではまた、食材を提供する産地間の「地ブランド代理戦争」とも化している。


今月9日、品川区側(山手線の内側で駅の東口、目黒駅は品川区域にある/主催・目黒駅東口駅前商店街)が「第12回 目黒のさんま祭り」を、そして16日には目黒区側(山手線の外側で駅の西口/主催・目黒区)が「第31回 目黒のSUN祭り」を開催、それぞれ5,000尾のサンマを焼いての大盤振る舞いで、もうもうとした煙やこんがりとしたニオイに包まれた会場は大勢の人出でにぎわった。
(目黒のSUN祭りの人出は昨年が約46,000人。今年の人出はまだ現時点(19日)では未発表/目黒区役所の担当部署)

二つの「さんま祭り」イベントはいずれも古典落語「目黒のさんま」の噺(はなし)にちなんだもの。本来なら双方の間に同じイベント開催をめぐって一悶着あったり、それ以前に、同じテーマでのイベント開催は控えたりするはずなのだろうが、後発であっても同じ目黒の地元同士、そこは感情的な対立を避けるという大人の対応で、むしろ双方イベントで張り合うことでこれまで話題を提供し、人気を盛り上げてきた。

「さんま祭り」のイベントである以上、主役はあくまでも〝さんま〟なのだが、実はこのイベント、サンマの水揚げを競う産地間の代理戦争でもあるのだ。

さらにサンマに香りを添える高級柑橘類の産地も加わり、いまや二つの「さんま祭り」は国内産地間の「地ブランド合戦」の様相をていしてさえいる。

品川区側(商店街)にサンマを提供しているのは、昨年のサンマの水揚げ国内7位の岩手県宮古市。それにすだち10,000個をすだちの生産日本一の徳島県神山町と、大根おろしの大根を栃木県那須塩原市が提供している。

一方、目黒区側にサンマを提供しているのは宮城県気仙沼市で、こちらは昨年のサンマの水揚げが国内3位、同様に大分県臼杵市が名産のかぼす2、500個を、大根は気仙沼市が提供している。

双方のイベントとも、サンマも柑橘類もすべて産地からの無償の提供である。もちろん、知名度向上、外部に情報発信される大きなインパクトを狙ってのもの。宮古市、気仙沼市ともに、前日水揚げされたばかりの新鮮なサンマを超特急でイベント当日の朝、会場に運んでくる。

新鮮なサンマは別名「流通の総合芸術」ともいわれる。
サンマの味が、捕獲技術や水揚げ技術、鮮度の保持技術、輸送技術の連携プレーで「作られる」からだ。そのため、同じ海域でとれるサンマでも、水揚げされる港や町によって大きく味が異なり、港ごとに味を競い合うことになる。(品川区側祭りのHPより)

たとえば宮古では、三陸沖で採水した「海洋深層水」を混合した独自ブレンドの氷をサンマの鮮度保持に利用している。そうすることで身が締まり、血があまり流れないので腐敗しにくく、サンマを入れた箱の水もきれいなのでニオイも出ないという。だからイベント会場で食べるさんまは「刺身でも食べられる」鮮度のものだという。

つまり、鮮度保持の技術に支えられた港ごとの味の競合が、二つのイベント会場を借りて産地間の「味のブランド代理戦争」と化しているわけだ。当然、提供される食材は最高級品、つまりイベントで食べられるサンマは、東京で9月に食べられる「一番おいしいサンマ」とのことで、専門店や料亭でもなかなか味わえない「トップクラス」の味のものばかり。

無償提供については、品川の駅前商店街は当初、サンマを築地から仕入れていた。それは宮古で水揚げされたサンマだった。9月の中旬に南下するサンマでもっとも脂がのっておいしいサンマが宮古のサンマだという情報に触れたからだ。それを聞きつけた宮古側は、その話に感動して、それならと4回目からの無償での提供を請け合ったという。

すだちは徳島県神山町と友好関係を結び、3回目から無償で提供してもらっていた。また炭焼きさんまの必需品として那須塩原市は、大根おろしの大根を無償提供する申し出を品川区側(商店街)におこなっている。

サンマであれ香りの高級柑橘類であれ、これらの自治体が自分たちの最高のブランドである地域産品をアピールするに最もふさわしい場であり、これ以上のPR機会はそうはないと考えたうえでの無償提供である。

可能な限りのイベント支援は言うまでもない。イベント会場でサンマを焼く焼き手も実は自前である。

たとえば気仙沼の場合なら気仙沼の現地に「目黒のさんま祭り」の支援組織があり、当日はボランティア80名がイベント会場まで駆けつけている。前夜に気仙沼を発ち、夜を徹して500キロの道のりをバス2台、トラック2台で早朝の目黒に駆けつけ、サンマを焼くのである。

ここまでくると、ある意味、自前の無償イベントの出前ともいえる。そこで、似たようなイベントの出前のことを思い出した。このニュース欄の右隣にある『話題のイベント、人、企業』欄で紹介されていた。

そこに板橋の商店街の取材記事があり、日本中の自治体が自前の産品を持って出前の無償イベント開催の話が紹介されている。もちろんPRを兼ねてのイベントであるが、こうしてみると地方では、地域の産品PRを意図して、情報発信の機会となる大きなイベントなどを積極的に探しているといえそうだ。

そして自治体が連携すれば、そこからまた、PR機会や産品販路の拡大にもつながる。
目黒の例でいえば、東京の目黒、東北岩手県の宮古市、それに四国徳島県の神山町が「さんま祭り」をきっかけに連携した絆は、その後宮古市と神山町の姉妹都市提携にもつながった。今では「宮古のさんまと神山のすだち」をセットにして国内各地で活発なPR活動もおこなっている。

大きな話題性のあるイベントも、地方の「地ブランド」振興を意図した支援を受けて成立している以上、今後も同様の企画は次々と出てくるかもしれない。

※参考 目黒・品川各「さんま祭り」HP、日経新聞、読売新聞、その他



  NEWS & TOPICS[バックナンバー一覧]
 


HOME > NEWS&TOPICS [バックナンバー一覧] > 「目黒のさんま祭り」は、〝地ブランドの代理戦争〟イベントだ!